はじめに…

河北 幸高(かわきた ゆきたか)
[1975年(昭和50年)生まれ 福岡県筑紫野市出身]
・福岡県うきは市浮羽町で、茶5ha、米80a、、柿30a、筍を生産
・妻と一男一女の4人家族

2006年(平成18年)に30歳で移住,就農する前までは、農業とはまったく無縁の環境で生まれ育ち、サラリーマンとして働いていました。安定した給料ではありましたが、早朝から夜遅くまで業務が続き、体力、精神的にもかなり厳しい状態で、仕事の無い日はとにかく体を休めたい一心でした。妻と幼かった長男も私に時間を合わせる事から一日の生活が不規則になりつつありました。長男が幼稚園に上がるのと、長女が生まれるのを機に、子供ためにも「家族とゆっくり過ごす時間と、自然のある環境で仕事がしたい」と強く思い始めました。

福岡県うきは市浮羽町にある国の登録有形文化財にもなっている父の実家では、今から二百年もの昔からお茶の生産をしており、以前は地元の多くの方々が当茶園の生産に従事し、昭和の中頃までは国内でも有数の茶園でした。父を始め、他の兄弟も地元を離れ就職をしていた事から、お茶畑の維持管理は地元の方にまかせるようになり、全国規模で急速に進んでいた生産性の高いお茶の品種への移行や、設備の近代化(機械化)、規模拡大の流れに置いて行かれるように、昔ながらの実生のお茶畑を大勢の人で管理していました。ここ数年は畑の規模も最盛期の半分以下の面積まで縮小し、高齢化などで畑の管理をする方も急に少なくなった事から、父も二百年続いてきたお茶園でしたが辞めようと思っていたようです。そこで、せっかくこの様な環境があるなら自分が引き継いでやってみようと思い、会社を辞めて農業を始める決心をしました。

農業を始めた初年度からとにかく苦難の連続でした。毎年のように春先の霜の被害に合い、お茶畑の管理は手が行き届いておらず、自分の背丈ほどもある茶園(一般的には膝から腰の高さ)があるなど、かなり荒れている状態で、その作業性の悪い中を大勢の人で非効率な作業を続けているのが現状でした。そのため製品になるお茶の品質も悪く、経費も逆に膨れ上がり、体力も無駄に消耗してしまうという悪循環でした。
作業性を改善しようと色々と提案しても、農業を始めて間もない私の意見はなかなか聞き入れてもらえず、もどかしい年がしばらく続きました。

農業に従事して以来、畑の管理に徐々に機械を導入するなど、まだ収入も少ない中の初期投資はかなり大きいものがありましたが、今では作業環境はかなり改善されました。
気候に左右される農業は毎年が「賭け」のようですが、会社勤めとは違い、自分の思いを存分に仕事に活かせる事が魅力なのと、何より家族と過ごす時間が多く取れるようになった事が一番です。
在来種のお茶…
2006年に就農。
引き継いだ茶畑は管理が行き届かず荒れかけていました。
そして、その引き継いだ茶畑の大半は、茶業界では見向きもされず商品価値も低かった在来茶の茶園でした。
「この人“在来”でやってんだってよ!」と鼻で笑われることもありました。
「“在来”作ってなんの魅力があるの?」
「そんなお茶、金にもならんめーもん。全部ぶった切ってしまえ!」と言われたこともありました。
しかし私は、現代の生産性・効率性重視の中で失われつつあった在来茶の栽培、復興にあえて取り組みました。
同業者の多くの方からは農業の知識も経験もまったく無い中で就農した私が在来茶栽培に取り組むのは“無謀”との声も多くありましたが、私には逆に凄いチャンスに思えたのです。
日本食が世界的にも注目される今、稀少な在来種だからこそ全国、海外に広がる可能性があると考えました。

衰退し続ける周辺地域…

全国的にも稀少な在来茶の復興に取り組み広く知ってもらう事が出来れば、地域に目を向けてもらうきっかけにも必ずなると思いました。また、老朽化の進む文化財の家の修復財源に充てるためにも、農業で家族を養っていくためにも必死でした。
この希少な在来種を絶対復活させる! 絶対軌道にのせてみせる!

現代ではマイナス評価されてしまうことを逆の視点から捉えなおして価値転換に挑むこと、地域の資源を活かしたこのような試みが認められ、成果を出すこと。

そうすることで、「ここで何かやってみよう!」

そんな地域の若い人たちの“思い”“やる気”を引き出すきっかけに、そして地域の人々に郷土の魅力や可能性を再認識していただけるようなきっかけになればと願っています。

現在、在来種では日本最大とされる4ヘクタールを管理していますが、2ヘクタールを何とか自身で販売し、残り半分は出荷できないのが現状で、まだまだ復活に向けては道半ば…。すべての畑から出荷できるよう、在来茶の価値をもっともっと多くの皆さんに知っていただけるようさらに努力をしていかなければと思っています。

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